2014-03-11

あの日から3年


 
 あの日から3年。
 
 あの地震で東北、日本の心は大きく傷ついた。「復興」という声に背中を押されながら必死で前を歩く人々の心の痛みは、どんなに前に進んでも完全には癒えず、奥底にじっと残っている。そして、その悲しみに呼応した人々の心も小さな軋みをあげている。それは自分自身では気がつかなくても。

 午後3時発の松島の島々を巡る遊覧船に乗るつもりだった。海岸線の小さな寿司屋で遅めの昼食をとり、船着き場へ入ろうとした時、午後2時46分を迎えた。

 導かれるように避難したお寺での数日間の日々が、その後の自分の道を示してくれた。光のない闇の中で、一睡もせず我々を見守り続けた若い修行僧。家族の安否が分からず、引きずり込まれそうな不安を、穏やかに、あたたかく受け止めた老僧。ラジオから数分ごとに聞こえてくる緊急地震速報の不穏な和音におびえる中、彼らがそばにいてくれるだけで、そこにいる全員が、自分ひとりではないと感じ、想像もできない圧倒的な現実とかろうじて向き合えた。ただ彼らがそばにいるというだけで。
 
 僧侶らは私に<存在>することのすごさ、大切さを身をもって教えてくれた。そのとき決めた。数々の偶然によって生かされた自分の残りの時間を、傷ついた多くの人々と一緒に生きて行くことを。心に寄り添い、共に生きることを。
 



RICOH GR